先日取材を受けたダイアモンド社の特集が発売されました。
記者の方には、事前に企画名を聞いてもはぐらかされましたので、良い方向での取材ではないことは想像できたのですが、なおさら自分の言葉で正しい情報をご説明したいと思い、取材を受けることにしました。
結果はランキングの発表に伴う(社長の)「大反論!」という企画。特集についてはもちろん、ランキングについても説明を受けていませんでしたので、私としては“反論”できるはずがありません。
同様の取材方法でほかの企業へもインタビューを行ったのだと思いますが、掲載された回答には「言い訳」というキャプションが付いていて、気をもみながらも真摯に答えた経営者の方々の姿勢と比較すると礼を欠くように思います。
“反論”するわけではありませんが、思うことがありましたので一言述べさせていただくと、企業は生き物同様、良い時も悪い時もあり、困難時には必死で再生の努力をします。
あらゆる手法を駆使して運転資金を確保し、従業員を守り、厳しい決断を敢行しながらも金融機関、株主や投資家、事業者らみなさまの支援によって危機を乗り越えてゆくものです。老舗の大企業でも存続を危ぶまれるほどの危機を複数回経験している例は珍しくありません。
この特集内容が自身の生活・仕事において参考になる、と考える読者層がどれだけいるのかわかりませんが、再生を目指して努力を重ねる企業にとっては悪影響にしかならず、さらに厳しい状況へ追い込まれる場合もあり得ます。
ましてや今はコロナ渦で過去にないほどの多くの企業が悲鳴を上げており、1社でも多くの救済が求められる状況です。世界規模で起こっている未曾有の経済不況のなかで、再生の道標となる光を見出し、活性化するような情報を提示できるのがメディアの力だと思うのですが、その力を応援視点ではなく追い込み視点で総力を挙げていることにおいては、実に残念に思います。
同誌のランキングで用いているのはZスコアですが、これを導き出すデータが全て正しく企業の経営状況を示しているとは必ずしも言えません。消費者のみなさんには、こうした経済指数で導き出される情報を「一つのセオリー」として受け取りながら、ほかの指標を交えて複合的に自分が信頼できる情報を導き出す姿勢を期待したいと思います。
私たちが目指す自然資本主義を実現するためには、非効率かもしれないと思いながらも遠回りする道を選択せざるを得ないことが多々あります。人間が考える効率的な成長戦略を、自然の摂理に当てはめるのは不可能です。ほかの企業戦略にも、個々の目指す主義があり、時には回り道を選択して苦悩する局面があるはずです。そうした場面を点として切り取るだけではなく、線として成長するように、企業と消費者がともに築き上げる経済サイクルが循環することを願ってやみません。